ついにSPケーブルまで悪魔の囁きに屈して手を出すことになってしまった。
最初はスーパーツィーターのエラックが標的になった。
いままではWEの20AWG単線で高域部分がささくれ立ったり、ヒステリックになったりしないように線材の特徴を生かしていたつもりだった。マッキントッシュXRT22sとの繋がり具合も同じWEのためか良く、不満は余り感じないでいたのは事実だ。
なぜ行動に移したのかと言えば、ひとえにマッキントッシュのSPコード交換を見越してのことなのだが、エラックの潜在能力をもっと引き出せるのではないかとの思いが以前から内心に潜んでいたのだった。
用意したケーブルはUSSRの2種類。
+側には、0.2mmの絹巻単線をダブルで使用した。
−側には、0.8mmの絹巻単線を一本使用。
ここから溢れでる音はとても素直な印象。広がりも丁度良く申し分ない。
あまり気が付かなかったのだがWEにも癖があったのだと思い知らされることになった。
続いて本城のマッキントッシュに突入する。
現在は、+側にはWEの16AWG撚り線、−側には同じWEの14AWG撚り線に落ち着いていて、そこそこの音出しができていたつもりだった。
最初に、本命のケーブルでは無い現代的ケーブル特性である透明感、立体感など素直な音場感表出の得意なケーブルを繋いで、スーパーツィーターとの相性も含めて音出しをしたみた。
結果としては、やっぱり私好みの音質にはならなくて、二日間で交代してもらう羽目になった。
本命のケーブルは、1940年ごろ製造されたベルデン。
このケーブルの出自は解らないのだが、普通のケーブルではない。
被覆は直径で6mmとかなり太く、材質はゴム系のようだが二種類使用していて表面にはワックスが塗られているようだ。
線材部分は1.2mmなのだが、36AWGの線が48本使われた撚り線になっている。
ベルデンのケーブルは何種類かあるが、このケーブルは異端児のごとくめったにお目にかかれないと思う。
希少性はとにもかくにも問題は音なのだが。
Yラグにケーブルを留めるまでは難作業となった。
被覆は簡単には剥がせないのだ。ケーブルストリッパーは役立たなくて鋭利なカッターで根気よく剥いで行くことになる。線材の周りには絹糸と綿糸だろうか二種類の細糸が絡ましてあり、被覆は線材に添って抜けないようになっている。
このような凝ったケーブルは、知っている限りこれだけだ。
何とか根気と忍耐力を総動員してケーブル四本に二つずつ計八か所の皮むきとYラグ留めを完了した。
こんなことをしているとSPにケーブルを取り付ける作業など、どおってことは無いように思えるから不思議だ。
早速電源を投入してヒアリング体制にはいる。
取りだしたのは、デンマークの歌姫「セシリア・ノービー」だ。

心に沁み入る限りなく透明なブルーを奏でる彼女のデビューアルバム。
現代的な透明感のケーブルでは、この北欧の冷たさの中にほんのりとした暖炉のような暖かさが滲むブルー感は表現できないのだ。カルダス・ゴールデンクロスをもってしても叶わなかったためWEにまでいってしまったのだ。
さて、ベルデンはどうかと言えば思っていた以上エラックとの繋がりもよくドンピシャリだ。
一曲目の「ワイルド・イズ・ザ・ウインド」から北欧の風がすうーっと吹いてきたのにはなびっくりした。
次に取りだしたのは、これまでXRTでは滅多に聴くことの無かった芸能山城組「輪廻交響楽」だ。

このアルバムの音ときたら凄いの一言でXRTでは持て余すことしきりなので出きれば避けたいのだ。
しかしながら、ベルデンのケーブルの能力は想像をはるかに凌駕してしまい素晴らしい音が響き渡ったではないか。正にサウンド・アートとしてのアルバムの本領を表現できたとおもう。
昔、この芸能山城組の組長が新しく出来上がったこのアルバムを持って、著名なオーディオ評論家兼大学教授の家に行き、音場再生を得意としたオーディオ装置で再生したところ、余りにもひどい音だったので落胆してしまったと、組長の著書に記述があった。
このアルバムの再生は半端なオーディオ装置では実力は発揮できないのだ。
今回のケーブル交換は最終章に到達したかもしれない。
これからの毎日が楽しみだが、デットな部屋はどうするのだ。