2016年07月06日

SONGS FOR DISTINGUÉ LOVERS

晩年のビリーホリディーの歌唱を全盛時の歌唱と比較してダメ押しをする御人がいるが、アートペッパーの復帰後をダメ押しするのと同じで、ずいぶん勿体ないことだと思うし、都合の良いところだけでは本当の素晴らしさを解っていないというのが実情だろう。
コドモアSP盤で聴く「奇妙な果実」や「イエスタディズ」の素晴らしさは論を待たないが、晩年の声質が変わってきても天性ともいえる聴衆やバンドに媚びない歌唱は、いっそう凄みを増してきて聴く者の心を揺さぶる。
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ヴァーヴ盤「高貴な恋人たちの歌集」と題されたこのアルバムは、1957年1月に集中的に録音されたなかの6曲で、ハリー・エディスン、ベン・ウェブスター、ジミー・ロウズ、バーニー・ケッセル、レッド・ミッチェル、アルビン・ストラー、ジョー・モンドラゴン、ラリー・バンカーのパック・コンボの面々がビリー・ホリディーを盛り上げている。
この中で特に好きなのが「アラバマに星落ちて」で、モノラル盤よりもステレオ盤のほうがバック・コンボが左右に振り分けられてビリーの声が中央に浮かび上がる。音質も悪くはなくビリー・ホリディーの本当の凄さ(悲劇の歌手という誤った常識を覆す)を観賞できる。
A面は、
@デイ・イン・デイ・アウト
Aフォギー・デイ
Bアラバマに星落ちて
B面は、
@ワン・フォー・マイ・ベイビー
Aジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングス
B時さえ忘れて
と、なっている。
死の一年前に録音されたCBSソニー「Lady in Satin」も恋の歌を唄ったアルバムで捨てがたいのだが、夫婦や恋人同士が巧くいかずに、もがき苦しむようであるならば、このアルバムを聴くことをお勧めする。高貴なとは、一時的な甘い恋ではなくお互いの歩み寄る努力を生涯続けていくことが本質なのだ。
何てことは無い自分のための、とっておきのアルバムだった。


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2016年03月15日

ALL BLUES

Freddie Hubbard が率いる5人のホーンズと3人のリズムによる8重奏団という重厚なサウンドと気持ちの良いハーモニーが聴きどころになる。
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この作品はフレディ・ハバードが尊敬しているセロニアス・モンク、マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーン、キャノンボール・アダレイに捧げたトリビュート・アルバムになっている。
ここで特筆すべきはこのアルバム作成に参加した3人のアレンジャー、ボブ・ベルデン、ボブ・ミンツァー、デヴィッド・ウェイスの存在だ。飽きのこないスリリングな演奏と迫力にはつい引き込まれてしまう。

Side1
1. One of Kind
2. D Minor Mint
3. Naima
Side2
1. All Blues
2. Spiriit of Trane
3. For Cannon

演奏者は、
フレディ・ハバート トランペット
ヴィンセント・ハーリング アルト・サックス
ジャヴォン・ジャクソン テナー・サックス
ロビン・ユーバンクス トロンボーン
ゲイリー・スミュリアン バリトン・サックス
ステファン・スコット ピアノ
ピーター・ワシントン ベース
カール・アレン ドラムス

1994年8月と12月、ニューヨーク・パワー・ステイションでの録音。
レコード・エンジニアはボブ・カッツ。
1997年ビーナス・レコードから発売された。

Side1 は、トーレンスTD124にシュアー・タイプVで、
Side2 は、トーレンス・プレステージにオルトフォンSPUで、
それぞれ再生。
それにしても、ハバードのトランペットときたらなんて若々しいのだろうか。
デットな部屋のJBL M9500も若々しく吠えている。
たまりませんなぁー。
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2016年02月13日

BN1

今日の白馬は朝方から悲しき雨音が聞こえてきました。午後からは本格的な雨になりそうです。
大変なことになりました。
BN1は勿論ブルーノート・初レコードのSP盤のことです。
知っている人は当然ながら少数居るでしょうが、知らない人にすればただのゴミ扱いになってしまう文化財です。
1939年1月6日、マンハッタンの貸しスタジオでアルフレッド・ライオンがミード・ルクス・ルイスとアルバート・アモンズを招いてレコーディングをおこなった。
その時、ピアノ・ソロ4曲を録音し、ルイスは「メランコリー」と「ソリチュード」を、アモンズは「ブギウギ・ストンプ」と「ブギウギ・ブルース」を、ルイスの録音を第1番に、アモンズの録音を第2番にしてブルーノートの初レコード制作となった。
アルフレッド・ライオンはこのレコードを私家盤にするつもりだったが、出来合いに満足したため少数を販売することにした。
これがブルー・ノート・レコードの誕生となり、第1回の発売はルイスのBN1を50枚、アモンズのBN2を50枚、それぞれコスト的には不利な割高で割れやすい12インチ盤でスタートした。
レーベル名は当初「ブルース・ノート」になるはずだったのだが、直前に「ブルー・ノート」に変更されたが、第1回発売のレコードラベルは、おなじみのブルーと白ではなくピンクと黒になってしまった。これはライオンのドイツ訛りがレコード制作側に正しく伝わらなかったためとの話がある。
ラベルに書かれた住所は、ライオンが最初に住んだニューヨーク7番街235番地の小さなアパート、BNの最初のオフィスとなるこの地になっている。
ちなみに、次の年の1940年には西47丁目10番街にオフィスを移転し、1943年にレキシントン767番地に移っている。
このBN1のレコードを探し続けて30年あまりなのだが、イー・ベイのオークションを始めついぞ見かけることは皆無だった。最近ではもう手に入らないものと断念していたのだが。
なんてこった。初めてオークションに出てきたではないか。
これは大変なことになった。何としてもゲットしたいが、当初価格から2日間で既に31倍にもなっている。
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BN1の両面ラベルの写真。

先日、なぜか我が家にこの御宝が1枚届いた。
成せばなったとはこのことか。
国内でこのレコードを所持している方は2名と承知している。
第3の男になれたのかは知らんが、これは大変なことになった。
ビクトローラのプレーヤーでA面をサボテン針でB面をとっておきの鉄針で聴いたのは言うまでもないが、1939年当時の風が顔面に打ちつけてきた。
何という音だ。




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2015年06月26日

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲

雨が降ります大雨が降る 遊びに行きたし傘は無し。
そういえば井上揚水も傘がなかったなぁー。
このような日は地下に潜って好きな音楽を好きなレコードで聴くにかぎる。晴ればれになるというものだ。
このようなこともあろうかと昨日からEMTプレーヤーを稼働させておいたのだ。最近は暖かくなったといっても地下は未だ寒いのでアイドラーのゴロ音がきになる。このため一日中稼働させておけばアイドラーが温まって気にならなくなる次第。
このEMT930stプレーヤーには専用のカートリッジTMD25を装填する。カートリッジは常時電源を投入しているコニサープリアンプの天板上に置き暖めてある。
EMT専用のフォノイコからコニサー5.0プリアンプを通してチャンデバにいく。
もう一台トーレンスTD124のプレーヤーも10分前に稼働させておいた。このプレーヤーにはGE040シングルバトンモノカートリッジを装填した。このカートリッジも温めておかなくてはいけない。
ここからハンドメイドのフォノイコでRIAAカーブを使い抵抗32キロオームでマランツ7Tプリアンプを通してチャンデバヘいく。
さて用意したアルバムはこれ、
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シュナイダーハンのバイオリンとケンペン指揮ベルリンフィル楽団。
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メニューインのバイオリンとフルトヴェングラー指揮フィルハーモニア楽団。
先ずは世界の標準EMTで聴く。
シュナイダーハンのバイオリンはとにもかくにもパックのオーケストラに覇気が感じられない。また、トレース音とノイズが大きくでてくるので少しばかり気になる。
メニューインは繊細なバイオリンの音色が素晴らしい。これはフルトヴェングラーの指揮と演奏がバイオリンの邪魔をすることなく盛りたてているためだ。
次にトーレンスで聴く。
シュナイダーハンのバイオリンが浮かび上がる。ノイズも気にならないレベルまで下がった。これはスタイラスが7ミルの太さになったためだと思う。EMTは2.5ミルとモノラルとしては細い方なのでマイクログルーヴの底チリノイズを多く拾ってしまうのだろう。大河の流れの中を揚揚と奏でるバイオリンの響き。たまりません。ベルリンフィルはやっぱり凄いと感心してしまう。
一方、メニューインのバイオリンはより切れが増したようだ。フルトヴェングラーとフィルハーモニア楽団の凄さはより増した。
レコードの製作時期に見合ったカートリッジ・スタイラスの洗濯(選択)がより良い音楽を堪能できることを再確認することとなった。
あーっ、とっておきの一枚が二枚になってしまった。

posted by みのさん at 18:04| Comment(0) | TrackBack(0) | とっておきの一枚

2015年06月12日

赤とんぼの唄

昨夜半から降り出した雨はお昼すぎには本降りとなり、久しぶりにまとまったお湿りとなった。
この「赤とんぼの唄」と裏面の「魚やのおっさんの唄」を唄っているのは、あのねのね。
清水国明と原田伸郎のコンビである。
キャッチフレーズが「たくろう追い抜くのは彼らしかいません。今や郷ひろみの人気にせまろうとしています。」なのだ。
さらに、「フォークの原点にかえって、まじめに真剣にフォークを追及していこうとしている彼らこそ、本当のフォークシンガーです。」とも誰ともなく言っているのだ。
おかしいだろう。
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赤とんぼがアブラムシとなり柿の種に変化して後戻りすること。できちゃたのは赤ん坊ときて、羽をつけると赤とんぼになってしまう何ともこの不思議さはただ驚くばかり。
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魚やのおっさんはギョだと。
土建やのおっさんには、そこどけんゃー。
最後は氷やのおっさんに怒られてコオリャ。
こんなレコードを製作するほうもするほうだが、購入するほうもするほうだし、ましてや未だ所持しているほうもなんだか。しかも聞いているし。
今、絶対に耳にすることのないこの異次元の唄たちをとっておきの一枚として強くお勧めするものです。

まったく赤とんぼの唄とは話違いなのだが、松田聖子の「裸足の季節」のB面に「RAINBOW〜六月生まれ」という唄がある。
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Rain rain rainbow 六月の雨のやさしさで あなたが好き
未だなんとなく硬い表情の歌声が切なく響く。
posted by みのさん at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | とっておきの一枚

2014年12月24日

CARMINA BURANA Orff

クリスマス・イブとは全く関係ないのだが、神城断層地震による揺れの大きさとその余震から精神的な圧迫のため暫くの間アナログ・レコードの再生を止めていた。
何時までも止んでいても埒が無いのでこの際思い切って再開することに決めた。
トーレンスTD124にはデンオンDL103がセットされていた。
フォノイコのカーブはマランツ7をチョイス。
プリアンプもマランツ7。
JBL9500で最初に聴いたのは、SEIJI OZAWA Boston Symphony Orchestra のカルミナ・ブラーナ(世俗カンタータ)。
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Fortuna Imperatrix Mundi 世界の支配者、フォルトゥナ(運命)
T.Primo vere 第1部「春」
  Uf dem Anger 草原にて
U.In Taberna 第2部「酒場にて」
V.Cour d`amours 第3部「睦言」
  Blanziflor et Helena ブランジフロルとヘレナ
  Fortuna Imperatrix Mundi 世界の支配者、フォルトゥナ
自然界のもっているエネルギーと人間のかかわりあい(運命)全てが、運命の女神フォルトゥナの内にあると。
運命の偉大さを深い感動と激しい興奮で謳っていく。
トラウマ解消にはもってこいの、とっておきの一枚だ。  
posted by みのさん at 20:46| Comment(0) | TrackBack(0) | とっておきの一枚

2014年11月07日

秋の夜長は

しっとりとしたバラードが心に沁みこんできます。
何時もよりボリュームを落として、マッキントッシュXRT22スピーカーの奏でる音楽に聴き入ります。
このようなときに聴くのはこのアルバム。
「Renata Mauro ballads」
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side1
@Is that all there is
AYesterday
BSomething cool
CYou go to my head
DEasy living
side2
@Alfie
AOne for my baby
BMy Man
CIt never entered my mind
DI didn`t know what time it was
EI get along without you very well

このアルバムは、side2のAlfieから聴き始め、side1のEasy livingで終わりにします。
歌の巧さはもちろんのこと絶妙なパックの演奏との相乗効果で、聴きほれるとはこのことでしょう。
本当はワインかブランデーなど飲みながらが良いのでしょうが、深入り焙煎の珈琲でも雰囲気は何とかなります。
喧騒な世界を忘れさせてくれる至福な時間がここにあります。

posted by みのさん at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | とっておきの一枚

2014年09月15日

4つの最後の歌

リヒァルト・シュトラウスの最晩年となる1948年に作曲されたソプラノのための管弦楽歌曲。
1.春
  薄暗い谷で 私は永く夢見ていた あなたの木々と青い空を あなたの匂いと鳥の歌を
  いま、あなたは私の前に 輝き、華やかな装いで 光を体に浴びながら 奇跡のように立っている
  あなたはもう一度私を見つけ 優しく私を抱く 私の四肢が震える あなたの素晴らしい存在に
2.九月
  庭は喪に服し 雨が花々に冷たくしみ込む 夏は震える 静かにその終わりを待ちながら
  小金の葉が次々と 高いアカシアの木から落ちる 夏はあわてて物憂げに微笑む 絶えてゆく庭の夢に
  長い間薔薇の傍らに 夏はたたずみ、休息を望む そしてゆっくりと 疲れ切った目を閉じる
3.眠りにつくとき
  今は一日に疲れてしまった 私の熱い望みもすべて 喜んで星空に屈しよう 疲れた子供のように
  手よ、すべてをそのままにせよ 額よ、すべての想いを忘れよ
  私の全ての感覚が今は 眠りに沈むことを望んでいる
  そして、解き放たれた魂は 自由に飛び回りたがっている 夜の魔法の世界の中へ
  深くそして千倍生きるために
4.夕映えの中で
  私たちは苦しみと喜びとのなかを 手に手を携えて歩んできた
  いまさすらいをやめて 静かな土地に憩う
  まわりには谷が迫り もう空はたそがれている ただ二羽のひばりが霞の中へと
  なお夢見ながらのぼってゆく
  こちらへおいで ひばりたちは歌わせておこう 間もなく眠りのときが来る この孤独の中で
  私たちがはぐれてしまわないように
  おお はるかな 静かな平和よ こんなにも深く夕映えに包まれて 私たちはさすらいに疲れた
  これが死というものなのか
1.〜3.は、ヘルマン・ヘッセの詩集に、
4.はヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフの詩「夕映えの中で」に、
曲を付けた。
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アルバムは、1974年録音のドイツ・グラモフォン。
カラヤン指揮、ベルリン・フィル Rシュトラウス交響詩「死と変容」/「4つの最後の歌」。
ソプラノは、グンドラ・ヤノヴィッツ。
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もし、生前最後に聴きたい曲は、と問われたならば「4つの最後の歌」と答えるでしょう。
この素晴らしい歌と演奏で静かに人生をとじていければ幸せというものです。
お墓にもっていくには勿体ないほどのとっておきの曲と一枚です。
posted by みのさん at 13:33| Comment(0) | TrackBack(0) | とっておきの一枚