何かと言うと、JBLのウーハー間の音質の違和感の解消こそ、大きな課題として重く圧し掛かっていたのだ。

M9500のパーチカルツイン35センチ・ウーハー4発と劇場用46センチ・ウーハー2発の音質が一致していないのだ。
ベースやバスドラに顕著に表れていて、鼓膜が刺激されてしまう。
色に例えると、46センチは「オレンジ系のだいだい色」、35センチは「赤色エレジー」になっている。
それぞれの音質には特に不満が無いので、困ったものなのだが、これが気になってしまうところに病根の深さが垣間見えるのだ。

全体の音質の土台ともいえる低域なので、繋がり模様によっては35センチの切れあるスピード感が突出してしまうきらいがある。
思えば、35センチの−側ケーブルにベルデンのビンテージ撚り線をあてがい、切れ込みある低域を狙っていたのだった。
+側の1.25ミリの裸銅線にペパー・ファイバー巻きケーブルとの相性は決して悪くないのだが、この際、−側にもこのケーブルを使用してみることにした。
46センチには、+・−ともにウェスタンの16AWG撚り線を使用していて、これは外せない。ウェスタンの程良い特徴である、高域・低域を伸ばし過ぎなく、かといって出しゃばることもなく落ち付いた質感は、捨てがたいものなのだ。
同じ線材を使用すればよいのでは、と言うと、問題はそう簡単ではない。
スピーカーケーブルの接続端子からスピーカーボックス内のケーブルが同じではなく、46センチは極太の撚り線であるのに対し、35センチはウェスタンの22AWG単線になっている。
パワー・アンプもモノラル・マッキントッシュは同じなのだが、出力や音質は同一にはならない。
こういったところに足を踏み入れてしまうと、抜けだすのに始末が負えないのだろうが、やってみなければ解らないことをやり続けるのは、道楽の本望だろうとのポリシーで、自己を奮い立たせているのが見える。
結果がすべてなのだ。
35センチに+・−同ケーブルの結線を終えて、最初に出てきた音を聞いて愕然としてしまった。
切れのあるスピード感は、このケーブルの所為だったのか、と。
しかしながら、これまでの経験則から、暫くすると音が変わってくるものだ。しかも新しいバージン・ケーブルなのだからなおさらだ。
小一時間もすると、あろうことか、なんと!、同色系になってきたではないか。
低域の切れとスピード感は減退したものの、調和する低域の音域全体に及ぼす影響は計り知れないものがある。
道は開けた。
これで、狙っていた「ビンセント・ゴッホの星月夜」のような音質が現実のものとなった。