しかしながら邦楽の楽器であることは間違いない。
言い換えればジャンルを超越した世界がここにあると断言できるのではないか。

このレコードは知恵遅れの子供たちの保育園「しおん会」のために開催されたチャリティー・コンサート、東京カテドラルマリア大聖堂でのライブ演奏盤である。

山本邦山の尺八、前田憲男のピアノ、荒川康男のペース、猪俣猛のドラムスによる「竹の組曲」。
曲目は、Side1にインプロヴィゼイション・その1、Side2にはインプロヴゼイションその2となっている。
Side1における曲の開始は各楽器演奏者の独奏による自己紹介のようであるが、これが終わるとすざましい演奏が繰り広げられる。
Side2に至っては音楽の神髄とはこのようなものなのだと感嘆させられてしまい時間軸を見失ってしまうのだ。
両サイドともに、少ないと思われる観客の遠慮がちな拍手が聞こえてきてやっと我に返ることになる。
ジャズの世界での体験ではコルトレーンとドルフィーに感じたものがあるが、このアルバムはこれを凌駕していると思うほどだ。
録音エンジニアの柳原康と大聖堂のエコーが効果を演出し、楽器を朝もやのかかる竹林の中から浮かびあがらせてくる。
素晴らしい音は再生が難しく、それなりの音響装置をしっかり調整しておかないと真価は発揮できない。
山本邦山の「銀界」もこの季節に捨てがたいが、「竹の組曲」は我が家の至宝になっている。